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天国と地獄の狭間~新興デベロッパーの倒産から再出発までの600日の記録 (97)
経済小説
2011年3月26日 07:00

<財産評定>

財産評定は、負債の部についても評価する... 認否書が再生会社の負債の確定作業であるとすれば、財産評定は資産の確定作業である。これは公認会計士事務所等に依頼して、会社の資産および負債を評価することで破産配当率を出す作業である。通常、認否作業と並行して行ない、会社の財産状況の評価の両輪をなすことになる。
開始決定日を基準とし、仮に破産した場合を前提として速やかに資産を換金することを前提とした評価を行なうため、その評価は継続的企業を前提とする通常の評価よりかなり安くなる。
 たとえば不動産は鑑定士の評価を採用するが、それも通常の評価ではなく、通常の評価に売り急ぎ修正率を乗じた価格を採用する。投資有価証券は時価のあるものは開始決定日時点の時価により、時価のないものは純資産法によったが、時価のない有価証券(通常、非上場株式)は、流動性が低く売却が困難であるため、本来、純資産法で求められる評定価額に対して、30%程度の非流動性ディスカウントを加味するべきであった。家具・什器・備品などは継続的企業を前提とした場合、固定資産に取得価格を計上し経年とともに減価償却を行なってゆくのが普通だが、速やかな換金を前提とした評価ではこのような資産は、買い叩かれたり逆に処分費用がかかったりするので、ゼロ評価に近いものにならざるを得ない。

 財産評定は、負債の部についても評価する。借方・貸方の相殺が発生することもあるからである。それが、認否書と連動することが望ましいとのことであったが、当社の場合は認否作業が上記の理由で遅れていったので、切り離して評価せざるを得なかった。財産評定で一番困ったのは、先に述べたような事情で再生債権とその他の債権をきれいに区分して把握できていなかったために、負債の部を再生債権と共益債権に分けるのが難しかったことであった。これは、ある程度簡略的な方法で振り分けざるを得なかった。

 それ以外にも財産評定では、その後の資産の処分と関連して会計とは異なる手法を取る必要があった。例えば当社は、民事再生前に開発型SPCを設立して、そこに当社所有の土地を移し、その後、間を置かず当該SPCから建物工事を受注する、というスキームの場合、会計上、土地売上の計上は建物工事が竣工し引渡しが済むまで待つことを方針としていた。そのため、実際には売却済みの土地を棚卸資産として計上し続け、その売却代金として受け取った金額を前受金として計上していた。財産評定では、このような会計上の処理は不要ということで財産評定書上では修正した。また土地を仕入れて、そこに建物を竣工させてから売却する、という通常の開発の場合は仕掛建物としては支払済部分のみを計上していた。しかしこの場合ゼネコン側では、支払済み部分以上がすでに支出されている。そのため財産評定では、ゼネコン側が超過支払している部分を当社の未払金として計上し、同額を仕掛建物工事として追加で計上した。ゼネコン側に、建物の出来高部分に対して商事留置権という一種の担保権を主張していただき、売却代金を、土地に対して担保権を有する銀行と応分に弁済するためである。

 これらの作業の結果、当社が開始決定日を持って破産した場合の配当率は、2.78%ということになった。債権者が再生計画に賛成するためには、民事再生によって破産より配当率が高まることが必要であるため、今後再生計画を立案するに当たっては、2.78%を超える配当率が必要なことになった。代理人弁護士全員と黒田会長を含む当社主要役員での全体会議で4.0%の配当率をターゲットとして今後取り組んでいくことを申し合わせた。

〔登場者名はすべて仮称〕

(つづく)

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